Production Note

PRODUCTION NOTE

 

「仮面ティーチャー」劇場版を制作するにあたり、プロデューサーの植野浩之は守屋健太郎に監督をオファーした。かねてより「普通とは違う、新しい切り口のヒーローものや学園ものを作りたい」と考えていた守屋監督は、原作をリアルタイムで読んだ際に映像化の可能性を思案していたという。それから6年後、偶然にも届いたドラマ化のオファーを二つ返事で快諾し、ドラマの総監督とタイトルバックを担当した。ゴールデンタイムのドラマでも主演を張るKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔を中心にした、深夜ドラマの枠を超える豪華なキャストと、守屋監督をはじめスタッフのヒーローものへの熱が伝わったのか、放送が始まると幅広い年齢の男性層からも大きな反響が巻き起こり、劇場版の制作を後押しした。

 

仮面ティーチャーこと荒木剛太が、華空学院の生徒たちと打ち解けていく物語は、テレビ版で完結した。そこで植野や脚本の山岡潤平らは、劇場版で剛太にどんな試練を与えるべきかを話し合った。他の高校に転勤するというアイデアも出たが、対生徒ではなくかつての恩師と対決するというシナリオが、剛太にとって最大の試練になるだろうというところから、脚本づくりが始まった。仮面ティーチャーには、本当の悪人は出てこない。剛太と羅門の対立も、善悪ではなく教育に対するポリシーの違い。羅門は生徒のためであると本気で思っているからこそ、『体罰が必要』と主張する。本気の教育論を戦わせることが、「仮面ティーチャー」という学園ものに必要だった。ヒーローものという視点では、観る側の共感を得るにはリアリティが必要になるため、敢えて世界観を狭く構築した。守屋はこの作品を「人の想いを継承する物語」と言う。羅門の想いを剛太が受け継いで教師になり、剛太の想いが草薙や金造に伝わって成長していく物語を表現するために、ドラマの最終話と劇場版のクライマックスでは、校門のシーンで意図的に同じ撮り方がされている。主要キャストは作り手のこの想いを説明され、しっかりと受け継いでからのクランクインとなった。

 

「自分の正体を隠すという大きな嘘をついているので、それ以外の部分は愚直なまでにまっすぐな人間として演じきってほしい」という守屋監督からの要望を受けた藤ヶ谷は、ドラマがインする前に監督とミーティングを重ね、荒木剛太というキャラクターを作り上げていった。2人はドラマの準備稿を読みあわせながら、言葉遣いや語尾に関するディスカッションや、仮面ティーチャーと剛太の声の演じ分け、かなり細かいところまで詰めることができた。その結果、「現場に入ってから迷いはありませんでした」と言い切る藤ヶ谷の演技に、「僕の考える剛太そのものでした」と監督も太鼓判を押す。現場での藤ヶ谷は、生徒役の俳優たちにとってまさに担任教師。まだ演技経験の少ない俳優たちに、「リハーサルからきちっとやろうぜ」など声をかけて気持ちを高め、まとめ上げていた。

 

剛太の恩師にして最強の敵である羅門役には遠藤憲一がキャスティングされた。遠藤により羅門は、ただ単に威圧的なわけではなく、どこか人間味があふれるキャラクターに仕上がった。ドラマから引き続き出演する斎藤工が演じる教育省の飯倉と、上司・御堂事務次官を演じる萩原聖人が対決するシーンでは重厚な演技合戦が繰り広げられ、スタッフが息を呑む一幕も。剛太対羅門、飯倉対御堂という、二つの対立の構図が描かれている。遠藤、斎藤、萩原ら上の世代の役者たちを通して、各人の生き方や苦悩を深く描くことで、大人たちが共感できるドラマに仕上がっている。大政絢が演じる美樹はドラマ版からの成長具合が見所。また、羅門の右腕となる冷徹な教育マシーンの阿南に、原幹恵がボディスーツを着て挑戦している。

 

ドラマ版からちりばめられている様々なヒーローものへのオマージュ。映画では、バイクに乗った銀の仮面ティーチャーが壁を突き破るシーンが「仮面ライダー」(79年)のライダーブレイク。監督やスタッフたちの「いつか壁を破りたい!」という少年の頃からの夢が実現するシーンとなった。アクションにおいては、単なるアクロバットではなく、パンチの一つ一つにどんな意味や想いがあるのかということを考えながら、ストーリー性を持たせることに注力。また、劇場版の銀仮面には冒頭から傷がついている。それは、「日本のヒーローものはほとんど傷がつかないし、服も汚れない。自分の信念を貫いて何かを成し遂げようとすると、たくさんの傷を受けるもの。それをビジュアルで表現することで、荒木剛太の生き方を示したかった」という守屋の思い入れの現れだ。フレームいっぱいに表示されるテロップや、画面ひとつひとつをデザインする感覚の色彩設計も守屋監督の美意識が注ぎ込まれている。

 

同世代の若手俳優が競演する現場は、切磋琢磨という言葉が相応しい。金造とM4は、役においても、馴れ合わない、個として存在する。その関係性が芝居においてもプラスに作用し、「自分が一番良い芝居をしてやるぞ」という気持ちで取り組んだことで大いに刺激し合い、成長した。守屋監督が若い役者たちに、現場では役柄のままいるよう指示したことも、彼らの背中を「遠慮は無用」と後押しした。菊池風磨は常に金造のオーラを身に纏い現場にいた。ジェシーは影のある役、凄みのある芝居に埋没した。小瀧望は感情を押し殺した芝居とアクションのセンスで現場を驚かせた。菊池やジェシーの身体能力の高さや魅せるアクションの上手さも、アクション映画としてのクオリティを支えている。